晴釣雨読!
私が集めたフライフイッシング関連の書籍の紹介です。
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●「雨の日の釣師のために」●
TBSブリタニカ(購入当時価格2000円)
今は亡き豪快なアウトドアの著作が多い開高健氏が編者になっている釣文学の短編集だ。古きよき時代のヨーロッパの釣りやE.ヘミングウェイに代表にされるアメリカの釣りが次々と登場する。ヘミングウェイの作品は有名な「二つ心臓の大川」で青年がバッタを使った釣りをするというストーリーでみずみずしい釣りシーンが圧巻だ。全体的には川での釣りが多い。だが釣りの技術的な部分を読むのではなく、少し古風な釣りを楽しんで読むという姿勢が正しいだろう。またおそらく開高氏が付け足したと思われる作品が幸田露伴の「幻談」、井伏鱒二の「釣魚記」そして同氏の「黄金の魚」の3作品。井伏氏の釣り好きは知られているが、細やかな描写が昭和初期の釣りをイメージさせて興味深い。まさに雨の日に読みたくなる一冊である。
●「フライ・フィッシング研究」●
山と渓谷社(購入当時価格980円)
研究≠ネどとタイトルにあると小難しいイメージがあるが、内容はマンガである。久保田鉄氏の絵が楽しい。ストーリー仕立てになっていて、ふたりのカップルがフライフィッシングに興味を持ち、おじさんに教えを乞いながら、道具の揃え方、キャスティングの仕方、フライタイイングの仕方などを習得していくというものだ。終盤では実際の釣行のシーンがあり、楽しさ満開のハッピーエンドとなっている。ざっとフライフィッシングを理解するにはよい一冊であり、堅苦しさもないので入門書としては最適ではないだろうか。実際に私もこの本を初心者のころに購入したという記憶がある。技術書としてもポイントが押さえてあるので、今読み返してみても基本が学べる。また技術的なイラストや写真も入っているのでわかりやすい。巻末のフライフィッシングエリアは、改訂版では更新されているのだろうか? どちらにしても参考程度の内容だと思われる。
●「ヘミングウェイ釣文学全集」●
遡風社(上巻購入当時価格1600円、下巻1800円)
とても好きな作家である。ヘミングウェイはタフでとてもワイルドなイメージがある作家だが、その内なるものはとても繊細で神経が細やかな人であったらしい。原稿も推敲に推敲を重ねたらしくて、言葉を大切にしたといわれている。この二巻でヘミングウェイの釣に関する小説はたいていが網羅されている。上巻は「鱒」とタイトルされており、川での釣りを背景にしている。有名な「大きな二つの心臓の川」を始め、ヨーロッパやアメリカでの川釣りが紹介されている。アメリカでの釣りの方がアウトドア的なイメージが強いのはなぜだろうか。どちらにしても自然の中での描写が秀逸である。下巻は「海」で、映画にもなった「老人と海」を含めた海釣りが主題になっている。ヘミングウェイが描く海釣りはそのほとんどがトローリングでのマリーン釣りである。読んでいると青いイメージが沸々とわいてくる。潮風の香りがしてくるほどである。どちらの巻も巻頭にはヘミングウェイのあまり知られていない写真が収められていて興味深い。週末の午後、陽のあたるテラスでゆっくりと読みたい2冊である。
●「BASIC FLY TYING BOOKS」●
辰巳出版(購入当時価格1500円)
2、3年前に購入した。タイイングの本はたくさん出ていて、うちにも数冊は本棚に寝ている。タイイングにも大家がいて、たいていはそうした大家が本を書くことが多く、この本を見つけるまでは、そうした大家の本を読んでいた。だが、じつにわかりずらいのである。その理由は、ウンチクが多すぎるのが原因ではないだろうか。この本はつり情報編集部が編集している。そのためか、じつに淡々としかし必要な情報がキチンと押さえてある。全編がカラーというのもわかりやすい。ひとつのフライを始めから順を追って写真が並んでいるので、その通りに巻いていけばいいのである。ただ、初心者向けというよりは、タイイングの基本がわかっている人に向いているように思う。またリング綴じになっているのでペタンと開いておけるのもいい。内容としてはベーシックなフライが網羅されているのだが、ところどころに新しいアイディアが入っているので面白い。この「カディス、ストーンフライ、テレストリアル編」のほかに「メイフライ編」「ニンフ、ウェットフライ編」がある。タイイングにお悩みの方はぜひ見てみてほしい。またタイイングをしなくてもきれいな写真ばかりなので眺めるだけでも楽しい。
●「釣魚大全」●
小学館(購入当時価格1600円)
釣り人ならダレもが知っているはずのアイザック・ウォルトンの名著である。名著と云ったが、はっきりいって私にはその素晴らしさの全ては理解できない。釣りのバイブル≠ニ云われているが、釣り場に持っていくことはまずないだろう。だが、なぜにこの本が釣り人のバイブルとなったのだろうか? それは推測するにじつに350年前にこの本は書かれているのである。日本では江戸時代である。国民の多くは生きることに四苦八苦していた時代なのである。そのころに釣りを通したユーモアあふれる文章を書き、それを出版するということが凄いのである。日本ではせいぜいフナ釣りとかタナゴ釣りの技術書が粋人によって書かれているぐらいであろう。そこで改めてこの釣魚大全を読むと、釣師と猟師の会話で話しは進んでいく。その内容は、釣り方、魚のこと、その料理のことなど多岐に渡る。登場する魚は、ニゴイやカジカ、ウナギやニシンといったありきたりの魚である。この小学館版の翻訳と解説は立松和平氏である。立松氏が釣りをするというのはきいたことがないが、かなり正確に訳されている。さすがにところどころに登場する詩の翻訳は面目躍如である。ただやはり原語で読む方が何倍かこの本の持つ魅力を感じることができるであろうことは憶測できる。シェークスピアと同時代であるので当然に宗教的であり、古語を多分に含んでいるのはいたしかたないだろう。この書は、週末の深夜スコッチウィスキーを片手にゆっくりと読むのがぴったりくるだろう。
●「日本のフライフィッシング」●
河出書房新社(購入当時価格2480円)
この本は日本を代表するフライフィシャーマンたちが集まって書き下ろした技術書でり、歴史書であり、哲学書である……と思っている。著者にはタシロニンフで有名な田代兄弟や今はなき釣りキャスターだった西山徹氏、タイイングの宮下力氏など層々たる面々が参加している。内容は、ロッドやウィーダーなどの道具選び、タイイング関係の道具やマテリアルの紹介、タイイング、キャスティング、ドライやウェットなどフライごとの戦略、フィールド別の戦略、フィールド紹介、フライフィッシングの歴史などなど盛りだくさんである。つまりこれ一冊でフライフィッシングの全てがわかるというものだ。ただフィールド紹介は今ではその影もないような場所もあり、実戦するには無理なフィールドもある。この本は、フライフィッシング関連の買い物やフィールドでの確認、そしてオフでの読み物として万能である。つまり手放せない。もしあなたがフライフィッシングをやる気になって最初の一冊にするには最適だといえる。
●「フライフィッシング100の戦術」●
山と渓谷社(購入当時価格1650円)
西山徹氏が亡くなったのは昨年のこと。晩年は北海道の道東に住んでいらしゃったらしい。じつは私が釣りを始めたのはルアーフィッシングからだったのだけど、そのときにルアーフィッシングの本を最初に買ったのは同氏の著作であった。わかりやすく実戦的であったので、フィールドに持っていって休憩しているときなどはよく読んだものだった。そしてフライフィッシングを始めてなかなか釣果がなかったときに買ったのがこの本である。実際、この本にはお世話になった。たとえば「極細ティペットがキャスト中にヨレてしょうがないときには」とか「フライに対する反応は、養殖魚と自然魚とはどう違うのか」などといった必ず悩む点をケースごとに解説して、その戦術を授けてくれている。というようにフライフィッシャーマンがフィールドで困るポイントが、まるでかゆいところに手が届くように書かれているのである。西山氏が「そこの人、そこで悩んでいるなら、こうすればいいんだよ」とやさしく教えてくれているようだ。この本に出会ってから、私は同氏をココロの中の釣りの師匠と思っていた。テレビの釣り番組のキャスターとしても有名だったので、ご存知の方も多いだろう。同氏は釣りキャスターという職業を定着させた草分け的な人でもあったのだ。まったく惜しい方を亡くしたものである。合掌……。
●「続山釣り」●
立風書房(購入当時価格1650円)
サブタイトルに「故郷の谿から」と銘打たれたこの本はインディーズのニオイがしておもわず手に取った本だった。続≠ニあるから「山釣り」は2冊めなのだろう。ということはそれなりに好評だったにちがいない。それもうなづけるのだ。なぜなら、ここに寄稿している人たちはみんなその地方の釣り人であり、地元の生の声であるからだ。渓流釣りをしている人ならわかると思うが、単独行ではその渓流に最低でも年間を通じて10回は通わないとその渓流のよさや悪いところはわからない。地元の釣り人に訊ねても、たいがいは口が重い。それはやはり日本の釣り場の許容量が小さいからである。なるべくいいポイントは教えたくないのである。だから、こうした釣り紀行文が集められている本は貴重なのである。で、この本は東日本版である。そして、その川の地図まで掲載されて、実際に釣りを楽しんでいるような錯覚を覚える。寄稿をしているほとんどの人は文章に関しては素人である。それだけに飾りの少ない文章にリアリティを感じるのだ。また、現場での写真も挿入されているので楽しい。どこか知らない川に釣行したいと感じたときに、ゆっくりと読み出してみてはいかがだろうか。
●「釣り時どき仕事」●
読売新聞社(購入当時価格1300円)
タイトルだけで手に取ってしまった本である。この釣り時どき仕事≠ヘ、はっきりいって私の理想だ。できれば、時〜ど〜き≠ニ間を空けたいぐらいである。著者は夢枕獏氏、SFなどの小説を得意とする作家である。最近では山岳小説など幅広い分野で文章を書いているようだ。同氏のSFはあまり好きではないが、チョモランマを舞台にした山岳の長編小説を読んでから、ものすごく力量のある人だと再認識した。で、この本は釣りをテーマにしたエッセイである。一種の交遊録でもある気がした。とても軽いタッチで書いている。気楽に読める内容である。その分、物足りない気もしなくはない。夢枕氏に井伏鱒二のようなエッセイを期待するには、少し経験不足かもしれない。タイトルのように釣り時どき仕事ではなくて、仕事時どき釣り≠フ状態に陥っているような気がする。売れっ子作家なのでいたしかたあるまい。きっと、同氏も自分の願望がタイトルに現れているのではないかと邪推してしまう。あと20年後の同氏の釣りエッセイを読んでみたくなる。この本は、トイレでさっと読むにはいい本だと思う(夢枕さんごめんなさい)。
●「釣りの原典」●
博品社(購入当時価格2800円)
この本は水産大学あたりの研究者が参考書として使用できるような内容である。サブタイトルは(農商務省水産局編纂「日本水産捕採誌」)とある。農商務省などという省庁があったのは明治である。つまりこれは明治時代に全国の漁師の釣り方を道具と共に集めてイラストと共に紹介した本である。海と川の釣り方両方が網羅されていて興味深い。海では今でも同じような釣法で釣られてると思うが、川ではほとんどがなくなってしまったのではないだろうか。それだけ、明治時代では川漁師が多かったのである。また魚の名前の豊富なことに驚かされる。分類としては、道具、竿釣り、手釣り、ハエナワと簡単である。だが、ほとんどの道具が手作りであり、今でもマネをしたら作れそうなところが、釣り人ととしてはそそられる。先人たちの知恵と工夫が垣間見えるのを試してみたくなるのだ。たとえば釣り糸の結び方も、私なんぞは2、3の方法を駆使してさまざまな場面を切り抜けているが、この本では何十種類もの結び方が当然のように並んでいるのである。先人の釣り人たちの知恵に感服するのである。この本は秋の夜長、止めどなく先人たちの釣り方に思い巡らせながら読むのがいい。イマジネーションの世界に浸るのである。